愛の楔



冷たい風が俺の頬を撫でた。
まるで責めているかのようだ。


――――お前のせいで


「………全部間違っていたのか……?」


屋上に踏み込み、近くのフェンスまで行って勢いよく手をかける。
カシャンとフェンスが鳴った。


クッと唇を噛む。


どこで間違えてしまったと言うのだ。俺は、ただ美空と一緒に居たかった。
笑いかけて、名前を呼んでもらいたかった。―――ただそれだけだったのに。


天は存外俺が憎いらしい。


「――――解放、するか」


ハハッと小さく笑った。
今の美空は12歳。俺の事なんか知らない。適当に言い繕って、住む場所を提供すればいい。
もう、苦しめたくないから。


いっそこのまま忘れたまま別れた方が美空は幸せになれるんだ。


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