愛の楔



そうだ、そうすればいい。


そして俺は、戻れば良いんだ。
冷血無慈悲と恐れられていたあの頃に。


全て、丸く収まる―――。


「………泣いてる、の?」

「!!」


突然声をかけられ、俺はハッと振り返る。人が来たのに気づかなかった。
そして、そこにいたのは、病院服に身を包み、左手を包帯でぐるぐる巻きにされている病室にいるはずの美空の姿がそこにあった


「美空、」

「どこか、痛いの?」

「………?」


どうして此処に、と聞きたいのだが、美空が訳のわからないことを聞いてくる。


痛い?何を言っているんだ?


思わず首を傾けると、だって、と美空が俺を指差す。正確には俺の目を。


「泣いてる、よ?」

「!」


言われて初めて気づいた。頬に手をやると指先に冷たいものが触れた。


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