愛の楔
「美空、俺は別に疲れてなんかない」
背の低い美空に合わせるように腰を下げた。
「今日だって迎えに来たかったから来たんだ。美空が気に病む必要はない」
「………本当に?」
「あぁ」
そっと頭を撫でて笑みを向けてやると美空はホッとしたように顔を綻ばせた。
「行くぞ」
美空から離れて俺は、歩き出す。
「うんっ」
嬉しそうについてくる美空に、俺は、何とも言えなくなる。
今日で、全て終わりだ。
俺と、美空を繋ぐものは………
「ふかふかぁー」
ぺたぺたと車の座席を触りながら初めて乗るみたいに興味津々だ。
その様子を俺は、目元を和ませて見守る。
「どこに、向かってるの?」
窓に手をかけながら、流れる景色を追いながら美空が聞いてくる。