愛の楔
ぐんぐんエレベーターは上に上がっていく。美空は何も知らないから何しに来たのか知りたくてうずうずしているみたいだ。
チンッと鳴ってエレベーターが止まりドアが開く。エレベーターから降りて、脇目をふることなく進んでいく。
「………ここだ」
「?」
その階の一番端にある部屋の前で止まった。自分の服のポケットから鍵を取り出して表札も何もない部屋のドアに差し込んだ。
ガチャンと音をたててドアが開く。
「―――わぁっ」
中を見るなり美空は駆け出す。
「ひろーいっきれーっ」
はしゃぎながら部屋の中をぐるぐる回る。一人暮らしには少しだけ広めだが、ゆったりと生活できるだろう。
「気に入ったか?」
「うんっ」
美空はにっこり笑う。
よかった。