愛の楔



「どうしてここに?」

「―――今日から、ここがお前の家だ」

「………え?」


スッと美空から笑みが消えた。


「お前の家だ」


気に入ってくれてよかった。
ここからなら学校も近いから不便ないだろう。家具は一通り揃えたし、必要なら買えばいい。


「え、え?ちょっと待って……」

「何だ?」

「どうして、あたしはここに……?」

「………」


美空は酷く動揺しているようだ。
可笑しいな、と続ける。


「記憶喪失になるまで、あたしは龍さん達と一緒に暮らしてたって澪がいってた………屋敷に戻ったら記憶戻るかもって………楽しみにしていたのに、」


また、龍さん達と暮らせないの?と聞いてくる美空に、俺はグッと目を瞑り、頷いた。


「――――お前は、もう一緒に暮らせないんだ。」


一番、言いたくなかった言葉を口にした。


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