愛の楔



「俺は、お前と一緒にいる資格がない」

「し……かく……?」

「俺は、お前を傷つけた奴らと変わんないから……」


だから、一緒にはいられない。
もう会わない方がいい。
その方が、美空は、幸せになれる。


俺は、それだけ言ってから、何も聞かないで部屋からでた。
ドアが閉まる瞬間、美空が呼び止める声が聞こえてきたが、聞こえない振りをした。


一階の駐車場に止まっていた車に乗り込み、直ぐに車を出させた。


「良かったの?これで?」


車の中で待機していた澪が聞いてくる。俺は、窓に額を押し付ける。


「これで――――良かったんだ」


マンションを出る前に、マンションから飛び出してきた美空が目にはいったが、俺は、目を瞑った。


これで、良かったんだ。
何も覚えてないまま、幸せになってくれ。


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