愛の楔



着崩した着物に厳つい顔。ニヤリと笑う様は、悪魔に見えてしまうときもある。


「なんだ?龍、なに抱えてんだ?」


ズカズカと近づいてくる男に溜め息が零れる。出来れば会いたくなかった………何時帰ってきたんだ。


「傷だらけじゃねえか」

「親父、話は後でいいか」


美空を覗き込む親父に俺は早く治療させたいと言うと、一瞬きょとんとした後盛大に笑い出した。
チッと舌打ちをする。


「いいぜ、まずはそのお嬢さんを寝かせてやんな」

「………」


笑いすぎてうっすら涙を浮かべている親父を一瞥して、俺は、自分の部屋に美空を運んだ。


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