愛の楔
「お嬢!!家の中は走らない!!」
その後に、息を切らせた賢が出てきた。
「あー、ごめんなさい?」
「たく……幼稚園児じゃないんですからね」
はぁ、と賢は溜め息をつくと、俺に向き直って一礼する。
「おかえりなさい」
「あぁ」
「おかえりー」
「ただいま、美空」
俺は抱きついている美空の頭を撫でた。美空は気持ちよさそうに目を細める。
「もう、体調はいいのか」
「うん。すっかり」
にっこりと笑う美空に俺もつられて笑ってしまう。
「………!!」
途端、周りから息を飲むのが伝わってきた。