愛の楔



「はい」

「………どうした」


美空が今日何していたか聞こうと思ったが、それよりも賢の疲れきった声の方が気になった。


見ると、昨日よりもやつれたような気がするのは俺だけか。


「若……お嬢、何者ですか……」


はぁ、と溜め息混じりに言われる。


「美空がどうした」

「俺には手に負えませんよ……」

「?」


賢が、何を言っているのか意味が分からない。
分かりやすく言えと言えば、言葉にするより見た方が早いです、と賢が俺の前に出て誘導する。


俺は、首を傾けながら、賢の後ろをついていく。


すると、だんだんとざわつきが聞こえてきた。


< 63 / 254 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop