愛の楔
「龍さんはあたしを助けてくれたもの、優しいヤクザだよね」
「………美空」
変わらない、笑顔。
「あたし、もっと龍さんが知りたい」
だから、一杯教えてね?と首を傾ける美空に俺は頷くしかなかった。
この時に、気付いていればあんなことは起きなかったのではないだろうか。
美空のこの笑顔の奥底に潜む感情に気付きさえすれば、後悔することはなかったのに。
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考えてみれば美空はまだ17で高校生だ。
ずっと家にいさせるのではなく、学校に通わせた方が良いのではないか。
「………どう思う」
「何当たり前のことを聞くんです」
呆れたように炯は溜め息ををつく。