愛の楔
売り上げは下がるだろうが、取り戻せば良い話だ。
「わかりました」
一礼して、炯は部屋を出ていく。
部屋に一人になり、額に手をやって溜め息を一つ。
「仕事は増えるばかりだ」
「仕方ないんじゃないの?若の務めじゃん」
突然飛んできた楽しそうな声。
「………勝手に入ってくるな、澪」
「暇なんだもん」
ニコニコと笑いながら俺の前に座る少年に一瞥する。
確か美空より若い澪は、肩につかないざんばらで整っていない髪は銀髪。年相応の顔付きは一瞬見ただけなら女と間違えてしまうだろう。
「ねぇね、女の子連れてきたって?」
「………だったらなんだ」
「本当に?!会ってみたいなー」
ニコニコと気さくに話し掛けてくる澪。きっとこの場に疾風がいたら拳骨の一発喰らわされているだろうな。