愛の楔
「その話は昨日解決しただろ」
「でも………」
「俺がいいって言ってるんだ」
お前は、俺から離れたいのか。
ギロリと睨むと、美空は、ごめんなさいと身体を縮ませて謝る。
薄く涙を浮かべる美空に、俺はハッとして気を緩める。
無意識に、殺気まで含ませていたみたいだ。
「すまない」
手の甲で、涙を拭いながら美空は首を振る。
一般人のしかも女に殺気はキツイだろう。
「美空……」
「あたしが、聞き分けが悪かったから」
「違う」
違うんだ。
美空は、無言で立ち上がった。
そのまま部屋からでていこうとしていた美空の手首をとっさに掴んだ。
「美空、」
「……はな、して」
「っ」
涙声の美空に俺は唇を噛んだ。
美空を傷付けてしまった。