【バレンタイン短編-2010-】君の第2チョコ。
「・・・・」
「・・・・」
しばらく沈黙が続く。
先輩のミルクティーも俺のも、缶にはまだ大半が残っているけど、冷めて湯気も立たなくなった。
話している間、先輩はほとんど缶に口をつけなかったし、俺も飲むのも忘れて聞き入っていたから。
考えろ、考えるんだ俺!
先輩のために今俺ができること。
なんでもいい、なんでも・・・・。
けれど、考えたところで何も浮かばす、時間が過ぎていくだけ。
先輩は俺が何か言うのを待っているようにも見え、何も言わないでと訴えているようにも見えた。
もう終わったことなんだからと、ハチは気にしないで、と・・・・。
「缶、冷めちゃったね」
先輩がぽつりと口を開く。
白い息が、雪の降る暗い空にほぅほぅと上ってすぐに消えた。
「私、そろそろ行くね。ごめん、私たちのせいでハチに寒い思いさせちゃって。また明日ね」
そう言った先輩はすっとベンチから立ち上がり、小さく手を振って帰っていった。
俺は、見えなくなる先輩の背中をずっと見ていただけだった。