【バレンタイン短編-2010-】君の第2チョコ。
「さっき男バスを睨んでるように見えたけど、もしかしてハチもチョコほしいの?」
ボールを用具室に持っていって、モップで床を磨いていると、亜希先輩が訊ねてきた。
なぜか、クスクス笑いながら。
「はい?」
「いやね、すごい顔だったから。大丈夫だよ、ハチのぶんもちゃんとみんなで用意したから」
「はあ・・・・」
いやいや。
俺が心配しているのは、チョコをもらえるかどうかじゃなくて。
その・・・・亜希先輩のほうだったりするんですけど。
「先輩、あの」
「なに?」
ついつい、まだ女子部員に囲まれて鼻の下を伸ばしている190cmに目が行ってしまう。
先輩と並んでかけているモップも俺だけ手が止まってしまった。
「・・・・ああ、あれ? 去年もだったの。あからさまに嬉しそうな顔しちゃってねぇ。でも、あれでもけっこうマメで、ホワイトデーのお返しなんかもしてたんだよ」
「そうっスか」
「うん」
再び動きはじめた俺の手。
亜希先輩は、俺の目の先をたどってそう説明してくれた。