薔薇とアリスと2人の王子


 ずっと黙っていたイヴァンがげんなりとしながら口を開いた。

「どうでもいいが早く降ろしてくれ」
「あ、兄さん、まさかとは思いますが高所恐怖症ですか?」

 声を出さずに笑うカールをひと睨みすると、彼はピーターに視線を投げた。
 イヴァンの懇願を受けてピーターは頷きながら言う。

「お兄ちゃん達、ペンドラの国にいたら捕まっちゃうんでしょ? だったらこの辺で降りよう!」

 この辺、とピーターが言ったのでアリス達は下を見下ろす。彼らは地上数十メートルの位置を飛んでいたらしい。いつの間にか谷間を抜けて、海原と町並みが見えた。

「ここは?」
「マエストーソの国です。海のある美しい国ですわ」

 ウェンディが指差す先には、白い砂浜の向こうに青い海が国を包むように広がっていたんだ。半島のように突き出ている部分が街になっているらしい。
 アリスは初めて見る海に、歓喜の声をあげたよ。

「すごい! 海って、ほんとうに青いのね」

 アリスは海っていうものを絵本でしか見たことが無かったんだ。

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