薔薇とアリスと2人の王子

「王子、ロサ・アンジェラの入っている小箱ってこれ?」

 アリスが女性の持つ箱を指すと、イヴァンがすかさず声を上げたよ。

「女、お前が盗ったのか!」
「ばかっ。拾ってくれたのよ」

 アリスがしょうもないイヴァンに代わって女性にお礼を言うと、彼女は無言で箱を差し出した。
 受け取った箱は案外軽くて(薔薇の花しか入っていないから当たり前だね)、色とりどりの宝石で彩られていた。
 アリスはそれをイヴァンに渡す。

「君はこの国の人? 綺麗な人だね!」

 カールが女性に言った。(最後のは余計だったけどね)
 すると女性から返ってきたのは、清廉な外見からは想像もつかない驚くべき言葉だったんだ。

「私は国の人間じゃない。気安く話しかけるな、色ボケ男!」
「……え?」

 可憐な風貌の儚い女性の口から出たのは罵りの言葉だったから、アリス達はつい固まった。
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