薔薇とアリスと2人の王子
アリスは先ほどから兄弟のおかしな会話を聞いて、厄介な2人を招いたと少し後悔し始めていた。しかもよりによって王族だしね。下手に扱えないし、面倒極まりないよ。
どうやって兄弟を追い出そうか。
そんな事をアリスが考えていると、赤毛の兄がふてぶてしく組んでいた足を組みなおして口を開いた。
その声色はわがままっぽく、威圧感と加虐性を兼ねていていかにも上に立つ者の口調だった。
「俺たちは2つの目的があって地球に来た。ひとつの目的は、俺の“大切な薔薇”に呪いをかけた魔女を見つける事だ」
「あ、そう。頑張ってね」
アリスは白けた目で2人を一瞥すると、立ち上がって家の古いドアを開けた。
思いっきり開けたんで、ギイ、と大きく軋む音がする。
弟が景気よく笑っていた。何がおかしいだかアリスにはさっぱり分からない。
「それは僕らに出てけって遠回しに言ってる?」
「何?まだ居座るつもり? あんた達の目的なんて私に関係ないわ」
その言葉に弟は軽くため息をついて、長い黒髪とロングコートの裾を靡かせて椅子から立ち上がった。
そのまま兄の肩を叩いたあとドアに向かう。
「残念だな。君も一緒に来ればいいと思ったのに」