薔薇とアリスと2人の王子

 アリスが瞳を輝かせていたよ。

「人魚って本当にいたのね!」
「ピーターのような亜人もいるんだ。いたっておかしくないさ」

 カールが言うと女性はキッ、と彼を睨む。
 ただ発言しただけでこのさまだ。どうやらカールは嫌われたようだよ。

「あなた、名前は? 私はアリスよ。アリス・リデル」

 アリスが女性の隣の砂浜に腰を下ろしながら言った。

「……エルザ」
「よろしくエルザ。ねえ、今はどうして人間の姿なの?」

 知っての通り、アリスは好奇心旺盛な子でさ。人魚だったというエルザに興味津々だった。
 エルザはアリスには心を許したのか、すぐに話してくれたよ。

「海の魔女に魔法をかけられて人間の姿にさせられたんだ。きっと、父上が頼んだんだろう」
「お父さんが?」
「私が海の王女に相応しくないから、きっと邪魔だったんだ」

 エルザは砂を握りながら、怒りの中にも悲しみが混じったような声で言った。

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