薔薇とアリスと2人の王子
彼女は大切なものなんて必要だと思わない。そんなもの無くたって生活には困らないし、探すほどのものだとは思わないんだ。
あいかわらず口を閉ざしたままのアリスに、男はいくらか柔らかい口調で言う。
「お前は幸せになるべきだ。大切なものが無い者は幸せになれない。――幸せになりたいのなら、いい返事を用意しておけ」
そのあとに男は“俺は女が苦手だけど”と付け足すと、ドアを開け放したまま町に消えた。
赤い髪が見えなくなるまで、アリスはぼうっと突っ立っていてね。
いつの間にか空には星が瞬いていた。
< 4 >
次の日、アリスは町を歩いていた。時間は昼すぎだ。
職を求めて彷徨う町民、果物を売り歩く少年、鍬を手にした農夫、いろんな人々が道を往来している。
「じゃあなアリス。また頼むぜ」
「ええ」
今、アリスはエドワードの相手をし終えてきたのさ。午前中からそんなことをしていて、もうクタクタだった。
昨日家を出た後の兄弟が気になったけど、余計疲れるだけだったんであまり考えないようにしていたよ。
――突然アリスはぴたりと止まった。
次の客を捕まえに路地裏へ歩みよろうとした時、背後から声がかけられたんでね。
しかもその声がアリスの癇に障るものだったものだから、つい身体が固まってしまったんだ。
「へぇ……君、アリスっていうんだ!」
「子供一人でどう生活してるかと思えば……コレか」
あいかわらず口を閉ざしたままのアリスに、男はいくらか柔らかい口調で言う。
「お前は幸せになるべきだ。大切なものが無い者は幸せになれない。――幸せになりたいのなら、いい返事を用意しておけ」
そのあとに男は“俺は女が苦手だけど”と付け足すと、ドアを開け放したまま町に消えた。
赤い髪が見えなくなるまで、アリスはぼうっと突っ立っていてね。
いつの間にか空には星が瞬いていた。
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次の日、アリスは町を歩いていた。時間は昼すぎだ。
職を求めて彷徨う町民、果物を売り歩く少年、鍬を手にした農夫、いろんな人々が道を往来している。
「じゃあなアリス。また頼むぜ」
「ええ」
今、アリスはエドワードの相手をし終えてきたのさ。午前中からそんなことをしていて、もうクタクタだった。
昨日家を出た後の兄弟が気になったけど、余計疲れるだけだったんであまり考えないようにしていたよ。
――突然アリスはぴたりと止まった。
次の客を捕まえに路地裏へ歩みよろうとした時、背後から声がかけられたんでね。
しかもその声がアリスの癇に障るものだったものだから、つい身体が固まってしまったんだ。
「へぇ……君、アリスっていうんだ!」
「子供一人でどう生活してるかと思えば……コレか」