薔薇とアリスと2人の王子

 エルザは傷が伴ったような笑みを浮かべたあと、今度はルートヴィヒを見下ろして呟きかける。

「ごめんルートヴィヒ、ずっと言えなかった……愛している」

 ゆっくりと、エルザは自らの胸に手を当てて珠の如き心臓を取り出す。
 キラキラ輝くそれはまるで瞬く星のようでアリス達は目を奪われてしまう。

 そのままエルザは弧を描くようにしてルートヴィヒの上に重なって倒れ込んだ。その手には輝く心臓が握られたままで。

「――エルザ?」

 アリスが掠れた声を溢す。

「もう死んだわ。全く、愛って偉大だわん」

 そう言いながらゾフィーはイヴァンに熱い視線を送った。もちろんイヴァンは無視だけどね。
 そしてゾフィーは砂浜まで這い出てきて、エルザ達の横にやって来た。

「頼まれたとおり、私が2人を泡に還すわん」
「ええ、お願い……」

 エルザとルートヴィヒのすれ違いが起こした悲しい結末にアリスも泣きそうだったよ。
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