薔薇とアリスと2人の王子
婦人はアリス達を順に見渡すと、
「あんたら、よそ者かい? なら領主の屋敷に行くといいよ」
会話するのも億劫そうに言った。
「領主さんがいるのね?」
「ああ。悪いけどこのマエストーソの国の怠慢な王家のせいで旅人を泊める余裕なんか皆ないからね。領主の屋敷くらいだよ、あんたらを泊めてくれるのは」
「そうなの……」
婦人は外灯のランプに灯っていた蝋燭の火を消していた。
その顔色はもう疲れきっていてね。
「見たところ貴族のようだし、領主なら泊めてくれるだろうよ。領主の屋敷はこの国の一番端っこ、辺境の荒れ地にあるよ」
3人は婦人にお礼を言うと、さっそく隣国との境へと向かう事にしたんだ。
隣の国って、魔女が栄えた国・ドロローソのことだ。
「領主って事は、結構立派な屋敷よね」
「俺たちの城の犬小屋ぐらいだろうがな」
さすがに1日の疲れが出てきた3人は、些か早足で街を歩いていった。