薔薇とアリスと2人の王子

 重い足を引きずってやっと屋敷に辿り着いたのだけど、アリスはここに来たことを後悔した。
 大きな屋敷を仰ぎ見ると、いったい何年手入れしていないのやら。
 レンガ造りの壁には苔や蔦で大変なありさまだったよ。

 普通、屋敷って華やかなんだけどさ。ゴシック風のここは荘厳さもあるけど、何より不気味さに包まれていた。

「人が住んでるのかすら、謎だわ」
「……でも明かりが点いてる。よっぽどの変人か、そう永くない老人だね」

 カールの推測にイヴァンが眉をひそめた。彼のこの不満げな表情はもう見慣れたけどさ。

「こんな屋敷に泊まるのか」
「あなたってそればっかね。寝る事さえ出来ればいいじゃない。わがままなんだから!」

 もはや軽蔑の視線でイヴァンを一瞥するアリスだ。

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