薔薇とアリスと2人の王子
弟の呆れた答えにため息を吐きつつ男は続けた。
「いいかアリス。お前はある魔女に両親を殺されただろ?」
「な、何であんた」
驚きに目を見開いたアリスに、今度は弟が言う。
「……僕らが来たひとつ目の目的は、兄さんの薔薇に呪いをかけた魔女を見つけることだって言ったの、覚えているかい?」
アリスは頷いた。
アリスの両親は、確かに魔女に殺されたんだ。3年前だよ。
庭で野菜を作っていた両親は、突然魔女に殺された。その光景を今でもアリスは忘れちゃいない。育った野菜が血に染まり、身体を引き裂かれた両親が倒れていた。その傍らには黒いローブに身を包んだ魔女が――。
「兄さんの薔薇を呪った魔女がこの国にいると聞いて、僕らはやって来たのさ。
……おそらく、アリスの両親を殺した魔女と同一人物だよ。魔女狩りでたいていの魔女は殺されたし、呪いの魔法を使える魔女がそう多く残っているはずはないから」