薔薇とアリスと2人の王子

 弟に続いて兄が静かに言う。

「お前の両親が魔女に殺されたことは、町で有名だった。今朝聞いたんだ」

 今までじっと聞いていたアリスは、口を開いたかと思うとこう言った。

「………昨日も言ったでしょ。この町に魔女なんていないわ!」

 兄弟の視線から逃れるようにしてアリスは歩き出す。

「あの魔女は両親を殺した後、逃げたのよ!違う国に!」

 だからもうここにはいない、とアリスは吐き捨てるように言った。
 まさか兄弟が探す魔女と、両親を殺した魔女が同一人物だなんて、夢にも思わない。アリスは混乱していたよ。

 3年前の両親の事件を今更掘り起こされて動揺するアリスをよそに、兄弟は冷静でね。

 それが余計にアリスを困惑させた。

「アリス、君はかつては“大切なもの”があったはずだ。魔女に奪われただけで」

 弟の言葉にアリスは心がざわめいた。





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