薔薇とアリスと2人の王子
「そんな……。ベルホルトが姿を消して、代わりに野獣がその場にいたあの時……、彼は食べられたと思っていたけど、違ったって事なの?」
クララはさらに野獣に近づく。
途中、イヴァンが溢した血だまりを踏んずけたけど、彼女は気づいてなかった。
「どうしよう、カール。もうすぐ日付が変わるわ」
やっと事態が落着しようとしたとき、アリスが隣のカールに小声で言った。野獣には聞こえないようにね。
日付が変わる。今日が終わる。
それは野獣が呪いによって死んでしまうことを意味しているってこと。
焦りを見せるアリスの横で、クララは野獣のたてがみに触れると愛しそうにその名を呼んだ。
「ああ、ベルホルト……」
――その時だよ。
今まで満月が顔を出していた窓が、突然音を立てて開いた。
一同が視線を向けると、窓から侵入してきたのは誰でもない、あの魔女だよ!
「はあ~い、お待ちかね魔女っ子ゾフィーの参上よん」
とたんに野獣から声があがる。
「お前は、私に呪いをかけた魔女!」
「ふふん。その様子だと、彼女も真実を知ったみたいねん」
ゾフィーは海で見た時と違い、しっかり2本の足を持っていた。ちゃっかり黒マントなんてしてさ。