薔薇とアリスと2人の王子
ここぞとばかりにアリスが身を乗り出す。
「ゾフィーさん、野獣さんを人間に戻してあげて!」
「また会ったわねお嬢ちゃん。言われなくても、そのために来たのよん」
ゾフィーはクララと野獣のもとに歩みよると、2人の手を握らせた。
「彼女が真実を知って、彼の名を呼んだ時に私が人間に戻すつもりだったのよん」
「そ、そうだったのか……」
野獣はすべてを知ることになったよ。
これでようやく魔女が呪いを解く方法を自分に伝えてくれなかった理由も解明したってわけ。
ゾフィーはピンク色の髪をくるくると指に巻きつけながら、ニンマリと笑う。
「人は見かけで判断しちゃいけないわん。王子サマはこんなカッコしてる私が怪しかったから、城を訪ねた私を追い払ったんでしょぉ? 城を訪ねた理由も聞かずに。ショックだったわ~。見かけで私の素晴らしさは分からないっていうのに。」
アリス達はゾフィーの言葉に唖然としていた。
「クララも野獣の醜い見かけに騙されて、一歩違えば愛する彼を殺してたかもん。」
ゾフィーが野獣とクララの握っていた手に自分の手を添えると、とたんに野獣が人間の姿になったんだ!
ブロンドの髪に垂れた青い瞳が印象的な優しそうな青年だったよ。
「も、戻った……!」
野獣――もとい、ベルホルトは感激のあまりクララを抱き締めた。