薔薇とアリスと2人の王子
「ありがとう、ゾフィーさん」
とアリス。
「いいのよん。それよりお兄さん腕大丈夫~? 私のボディで傷を癒してあげるわん」
イヴァンは気持ち悪い、と一言吐くと、腕を止血しはじめたよ。
クララとベルホルトが未だ抱擁を楽しんでいたんで、4人は部屋を出ていった。
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「最初から知っていたのね、王子」
アリスが1階の部屋でベッドに横になりながら言った。
「肖像画を見た後、野獣からクララという婚約者がいると聞いていたからな」
「そしたら夜にその婚約者がやって来た、と」
3人は今晩はここで寝て、明日の朝旅立つことに決めていてさ。出発の準備も整えてあった。
「で、あなた海の魔女だから人魚じゃなかったの?」
まだ3人について来ていたゾフィーに、嫌味を含めてアリスが言った。
「魔女を見くびらないでよん。足を出すことくらい朝飯前よん」
「それは結構なことだ。もうお前に用はないから帰れ」
イヴァンが必死に追い払うもんで、ゾフィーはそれからすぐに帰っていったよ。
去り際に、
「王子ぃ、私結構有能なのよん。大切なこと、クララ達から学んだでしょお? 見かけで判断しちゃ駄目なんだからね~」
とだけ言い残していった。