薔薇とアリスと2人の王子
「見て、古風な塔ねぇ」

 森の木々のあいだ、ちょっとした家が建てるようなところに高い塔がそびえていた。

 どれだけ高いかって、見上げても一番上がよく見えないくらい。


 今どきの塔とは違って、石造りのレンガでさ。蔦が這ってるし、今にも崩れそうだったよ。

「何もなさそうだね」

 カールが塔の周りをぐるりとまわってた。
 その時、異常に気付いたのはアリスだった。

「待って。見てカール。そこのハシゴは何?」

「え?」

 ちょうどカールが立ってるあたり、塔の壁づたいにハシゴがあってね。
 蔦のようなものできた、お粗末なものだよ。

「誰かが塔の上にいたんだ」

「この塔、不思議だわ。入口がないもの。ハシゴで出入りしていたのかしら?」

 と、これはアリスのひとりごと。
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