薔薇とアリスと2人の王子
act1 星の王子様
1.
ひとつだけ確かなのは、今が夕方だってこと。それ以外なんにも分からない。
だって周りは木に囲まれていて景色なんて見えやしない。つまり――そう、迷子ということさ。
「……僕は兄さんを尊敬しますよ」
少年は腰までのたっぷりとした長い黒髪を揺らして言った。
黒髪はうなじの辺りで一つに纏められていてね。なんともご丁寧に赤いリボンで飾られている。
少年は呆れたような口調だったけど、その翠色の瞳はいたずらっぽく光っていた。
少年の言葉に、隣にいる長身の男は素直にこう答えたよ。
「尊敬か。それは喜ばしい」
「あんた馬鹿ですか? 褒めてないですよ」
黒髪の少年が思いっきり睨むと、男は金色の瞳を細めてほくそ笑んだ。確信犯だよ。
こっちの男は赤髪でさ。でも血のような目に痛い赤色じゃなくて、控えめな暗い紅色。やっぱり、うなじの少し上で一つに纏めていたよ。こちらは黒いリボンだ。
そんな奇抜な髪色も相まった端正な顔の男は耽美的な容姿をしていてさ、妖艶な笑みがよく似合っていた。
少年はため息をついた。静かで暗い森に、そのため息は妙に響くようだった。
「あんっなに国を自信満々に旅立った矢先に迷子になるなんて、ある意味尊敬しますって意味ですよ」
ひとつだけ確かなのは、今が夕方だってこと。それ以外なんにも分からない。
だって周りは木に囲まれていて景色なんて見えやしない。つまり――そう、迷子ということさ。
「……僕は兄さんを尊敬しますよ」
少年は腰までのたっぷりとした長い黒髪を揺らして言った。
黒髪はうなじの辺りで一つに纏められていてね。なんともご丁寧に赤いリボンで飾られている。
少年は呆れたような口調だったけど、その翠色の瞳はいたずらっぽく光っていた。
少年の言葉に、隣にいる長身の男は素直にこう答えたよ。
「尊敬か。それは喜ばしい」
「あんた馬鹿ですか? 褒めてないですよ」
黒髪の少年が思いっきり睨むと、男は金色の瞳を細めてほくそ笑んだ。確信犯だよ。
こっちの男は赤髪でさ。でも血のような目に痛い赤色じゃなくて、控えめな暗い紅色。やっぱり、うなじの少し上で一つに纏めていたよ。こちらは黒いリボンだ。
そんな奇抜な髪色も相まった端正な顔の男は耽美的な容姿をしていてさ、妖艶な笑みがよく似合っていた。
少年はため息をついた。静かで暗い森に、そのため息は妙に響くようだった。
「あんっなに国を自信満々に旅立った矢先に迷子になるなんて、ある意味尊敬しますって意味ですよ」