薔薇とアリスと2人の王子

「ぼっ、僕には無理だよう!」

 クリストが首を振った。

「ラプンツェルには悪いけどっ、僕、酒場の女の子とも付き合ってるんだ!」


「はっ!?」

 アリスとカールが揃って声を張り上げたよ。

「ど……どういう事なの……クリスト……」

「ごめんよラプンツェル。いつか言おうと思ってたんだけど――なかなか――そういう事だから君との子は育てられないよ。」

「そんな……! こ、こんな事って……」


 唖然としていたアリスは、ふと我に返って猛烈な怒りを抱いてね。

 ついに我慢ができなくなってクリストに詰め寄ると、彼の頬を思いっきりひっぱたいたんだ!

「痛! な、何するんだようアリス」

「あんたって最低最悪ね! 何よ、他に好きな女がいただけでなくそれを黙ってたなんて!」


 しん、と静かになった部屋に、アリスの罵声だけが響く。

「本当に根暗で弱気なのはあんたじゃない、クリスト! ラプンツェルも何か言ったら? こんな男とは縁切っちゃいましょうよ!」


 ただ泣きそうな顔で佇むラプンツェルは、その言葉に頷きはしなかったんだ。

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