薔薇とアリスと2人の王子
 ラプンツェルは優しい眼差しをクリストに向けた。

 前の彼女では考えられないような、淑やかで聖母のような微笑みだったよ。

「大丈夫。クリスト、私分かってるから。あなたの本音を」

「え……」

 そしてラプンツェルはアリス達の方を向いた。

「今までありがとうございます。もう私達だけで大丈夫……」

「でも、」

「旅を続けて下さい。」

 ラプンツェルの意図が全く分からないアリスだったけど、兄弟がさっさと塔を降りていってしまったもんだから、仕方なく窓から部屋を出た。

 なにせラプンツェルの表情は穏やかで、本当に大丈夫そうだったしね。

 地面に降りたとき、ちょうど魔女がいた。ラプンツェルの育ての親の老婆だよ。

「ほっほ、さっき聞こえた怒声はお嬢ちゃんかね? 威勢のいい子だねぇ」


 陽気に話しかけてきた老婆だったが、初めて会うアリスは老婆が何者か分からなくてさ。

「どなた? このお婆さん」

 とイヴァンに聞いた。

「ラプンツェルを育てた魔女だ。俺達がドレスを買いに行った時に知り合ったんだ」

 老婆は笑い声をあげる。

「そうそう。あの桃色のドレス、あの子にさぞ似合っただろうねぇ」


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