薔薇とアリスと2人の王子

 自分は何が何でも王にならなければならないんだ、と主張するイヴァンを呆れた目で見つめるアリス。
 その固定概念はどこからくるのやら。

「あなたの王位なんて世界で一番どうでもいいけどね。で、魔女はなんて名?」
「“ローライド”。そう名乗ったらしい」

 ふうん、とアリスは興味なさそうに声を漏らした。

――そういえばここは、トランクイロの隣、センプリーチェという街だよ。寂れて治安も悪いトランクイロとは違って、ここは大きな街だった。市場だって活気があるし、なんといってもミュールミューレの国の王様が住む城があるのもこの街だ。

 3人はこの街に“ある噂”を聞いてやって来たのさ。

「それじゃ、とっとと行きましょう。“魔法の木”とやらがある屋敷へ」

 魔法や魔女の噂を聞いたらとりあえず向かってみる、というのはカールの作戦だった。


< 22 / 239 >

この作品をシェア

pagetop