薔薇とアリスと2人の王子
自分は何が何でも王にならなければならないんだ、と主張するイヴァンを呆れた目で見つめるアリス。
その固定概念はどこからくるのやら。
「あなたの王位なんて世界で一番どうでもいいけどね。で、魔女はなんて名?」
「“ローライド”。そう名乗ったらしい」
ふうん、とアリスは興味なさそうに声を漏らした。
――そういえばここは、トランクイロの隣、センプリーチェという街だよ。寂れて治安も悪いトランクイロとは違って、ここは大きな街だった。市場だって活気があるし、なんといってもミュールミューレの国の王様が住む城があるのもこの街だ。
3人はこの街に“ある噂”を聞いてやって来たのさ。
「それじゃ、とっとと行きましょう。“魔法の木”とやらがある屋敷へ」
魔法や魔女の噂を聞いたらとりあえず向かってみる、というのはカールの作戦だった。