薔薇とアリスと2人の王子
act8 青髭
―8―
三人はアンダンテって国にやって来た。ドロローソの国とは一変、明るい国だったよ。
活気のある夕方の市場では、商人たちの声が飛び交い、客で溢れている。とても平和そうな国だったんだ。
「魔女の手がかりは無さそうな国ね」
と、アリス。
「夜になる前に宿を探してくるよ。アリス、僕と兄さんの上着を持って待っててよ」
「なぜ上着を脱ぐの?」
「こういう栄えた国の裏には、物取りとかが多いに決まってる! こんな宝石着けて歩いてたら何されるか分かんないからね」
カールとイヴァン、2人分の上着を持たされたアリスは、重さに顔を歪めた。
宝石がついた服なんて重いに決まってる。
「アリス、上着のポケットにはロサ・アンジェラが入ってる。頼むぞ」
と、イヴァンが念を押す。
「わ、分かったわ……」
アリスが頷いたのを確認すると、兄弟は市場の人だかりの中へと消えていった。