薔薇とアリスと2人の王子
「ロサ・アンジェラを取り戻さなきゃ……」
もう一度そう呟くと、農夫の制止の声を背にうけながらアリスは市場から遠ざかっていった。
+
「アリスがいない」
そう言ったのは弟のほうだった。市場の表通りにいるはずのアリスがいないんだもの。そりゃ驚くさ。
「どう思います、イヴァン兄さん?」
ちょっと驚いただけのカールが兄のほうを振り返った。
「アリスがいないだと?」
「見りゃ分かるでしょう。どこ行っちゃったんだろう。僕達の服持ったまま……」
その時2人に声をかけたのは農夫でね。アリスと話してたあの農夫だよ。
「お兄さん方、この上着の持ち主かい?」
農夫が2人の宝石がついてやたらと重い上着を差し出した。
「そうですけど……これ、小さな金髪の女の子が持ってませんでした?」
「あ、ああ。渡すように頼まれたんだ」
「その女の子はどこに?」
カールの質問に農夫は難しい顔をした。アリスから行き先は口止めされてるんでね。
でも行き先を誤魔化すいい考えもなかったんで、彼は言いにくそうに真実を話したんだ。
「ドナウアー家の“人殺し城”へ行ったよ……」
兄弟は驚きに声も出なかった。
もう一度そう呟くと、農夫の制止の声を背にうけながらアリスは市場から遠ざかっていった。
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「アリスがいない」
そう言ったのは弟のほうだった。市場の表通りにいるはずのアリスがいないんだもの。そりゃ驚くさ。
「どう思います、イヴァン兄さん?」
ちょっと驚いただけのカールが兄のほうを振り返った。
「アリスがいないだと?」
「見りゃ分かるでしょう。どこ行っちゃったんだろう。僕達の服持ったまま……」
その時2人に声をかけたのは農夫でね。アリスと話してたあの農夫だよ。
「お兄さん方、この上着の持ち主かい?」
農夫が2人の宝石がついてやたらと重い上着を差し出した。
「そうですけど……これ、小さな金髪の女の子が持ってませんでした?」
「あ、ああ。渡すように頼まれたんだ」
「その女の子はどこに?」
カールの質問に農夫は難しい顔をした。アリスから行き先は口止めされてるんでね。
でも行き先を誤魔化すいい考えもなかったんで、彼は言いにくそうに真実を話したんだ。
「ドナウアー家の“人殺し城”へ行ったよ……」
兄弟は驚きに声も出なかった。