薔薇とアリスと2人の王子
「兄さん、ドナウアー家って、狂った城主がいるっていう屋敷ですよ。ほら、人殺し城って呼ばれてる」

 違う星の王子である2人がなんでそんなこと知ってるかって? それはまだ内緒だ。

「あの馬鹿……」

 イヴァンが小さく舌打ちする。馬鹿なんて言われて、アリスが聞いてたら大変だね。

「こうしちゃいられませんよ兄さん! 早くアリスを追いかけなくちゃ」

「そ、そうだな……」

 あれ、とカールがすっとんきょんな声を出した。

「兄さん、怖いんですか?」

「ば、馬鹿を言うな」

「…………。」

 そんな小声を言いながら、2人はドナウアー家の城がそびえる丘を目指して市場を後にしたんだ。

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