薔薇とアリスと2人の王子
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ブルルン、と馬が鳴いて馬車は止まった。
同時に馬車からドレスに身を包んだ婦人と、燕尾服を纏った男が揃って馬車から降りたんだ。
「あれがドナウアー家の主人とその奥さんね。うわぁ、あの奥さん強烈。お化粧が派手すぎるわ」
アリスは城の塀の向こうからそれを見ていてね。暢気に分析なんてしてる。
ドナウアー家の城は立派なものでね。最近流行っている、屋根が独特な形をしてるタイプなんだ。
野獣のボロ屋敷(@第7話)とは雲泥の差だよ。
「あっ」
そう声を漏らしたアリス。城に入っていった主人と婦人に気が付いたんだ。
急いでアリスも追うよ。幸い、見張りはいなかったんでね。
(ロサ・アンジェラは……あの馬車の中ね)
城に入ったすぐにある庭で夫妻が馬車から降りたんで、アリスはすばやく駆けて馬車の影に隠れた。夫妻はバカでかい扉を開けて、城内に消えていったよ。
ロサ・アンジェラの小箱が紛れこんだのは馬車の荷台だ。すぐに荷台に手を突っ込んだアリスだったけど、そこには何もない。
「ええー? な、何で?」
小さな身体を押し込んで見たけど、やっぱり何もない。日も落ちかけていて辺りは薄暗いけど、何もないってのは確かだった。