薔薇とアリスと2人の王子


「ったく、あのケバい女! こちとら毎日あんたの化粧品まで磨かされてるっつーのによ!」
「サンドリヨン? 何か言った?」
「いえ、いえ、幻聴ですよお姉様」

 ドリューは寄せた眉間を瞬時に戻して、笑顔で姉さんに振り向いたよ。
 大人しく命令を聞くドリューに満足したのか、姉さんは二階に上がって行った。
 それからドリューは雑巾に恨みこめるようにして、床をゴシゴシと磨きまくった。

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 ドリューはもともと、この屋敷で母親と父親の3人で暮らしていたのさ。
 今は貧しい恰好をしてるけど、彼女の身分は貴族なんだ。それがだよ。

「あーあ……いつまでこんな事すればいいの…」

 母親が病死した後、父親と再婚した今の継母がこの家に連れ子2人(さっきの姉さんはそのうちの一人だ)とやって来たんだ。
 1年前の春にね。それがドリューにとって地獄の日々の始まりだったってわけ。


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