薔薇とアリスと2人の王子


 彼女は自分がドリューだと訪問者たちに名乗ったよ。
 その時、2番目の姉さんが凄い勢いでやってきてね。

「ちょっと、ちょっと、サンドリヨン! このとても豪華な洋服の方、知り合いなの!? いったいどこの貴族様!? 灰かぶりの貴方に用事だなんて!」
「は!? 誰が灰かぶっ……。じゃなくて…ええと、違いますわお姉様。知り合いだなんてそんな事恐れ多いことありませんわ」

 一瞬別人のようになったドリューの顔は、すぐに元の愛想笑いに戻った。
 なにやら只ならない雰囲気だとアリスは直感した。

「ねぇお貴族様。灰まみれのサンドリヨンなんかじゃなくて、私の部屋にいらっしゃいませんか?ね?」

 香水の匂いを漂わせた姉さんがイヴァンに近付くと、彼はとっさに身をひいた。
 女嫌いな彼にとって、酔うほどの香水の匂いは毒薬に匹敵するのさ。




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