薔薇とアリスと2人の王子
 二人が迷った森は深かった。見上げたって空が見えないくらい木々がひしめいている。
 夕陽もろくに差しこまない。遠くで野鳥が嘲うように鳴くだけさ。

「なんだ、俺が悪いとでも?」
「それ以外何があるんですか? 兄さんのせいで城を追いだされるし、迷子になるし!」

 少年はやたらと着飾った服についた枝や葉を取り除きながら、心底絶望したようにそう言った。嫌味たっぷりと言ったはずが、男は何も考えていないようで平然としている。
 誰のせいでこんな事になったと……と少年は内心毒づく。
 森の中からの脱出だなんて、王家育ちの坊ちゃん二人にはかなり無謀だよ。

 そうそう、まだ確かなことはあったよ。
――この2人はある星からやって来た、王子様だってことさ。

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