薔薇とアリスと2人の王子
せっかく姉さんから逃げてきたのに、馬鹿兄弟のせいで見つかったらたまったもんじゃない。
声の出所を探ると、それは二人のすぐ近くだと気が付いた。
庭園を囲むように植えられている腰の高さまでの薔薇の花。その茂みから声が聞こえてきたんだ。
「ごめんなさいねドリュー、あの人たち子供なの。叱ってくるから待ってて」
「は、はい」
アリスはため息を吐きながら、少し離れた茂みに向かって駆けていった。
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「……から、…も、……ですか」
「ば……も、言え」
数人の男の声が庭園に植えられた薔薇の茂みの向こうから聞こえる。
アリスは迷うことなく声をあげた。
「このアホ王子2人! 何勝手に出歩いて――」
そこで言葉が途切れたのは、必然だった。
なぜなら茂みの向こうには、イヴァンとカール。それにもう1人いたんだ。
誰だって言葉が詰まるさ。