薔薇とアリスと2人の王子

「あ、アリス」
「アホ王子だと? 俺の弟を侮辱するな」
「あんたの事ですよ」

 状況が分からないアリスをよそに、2人は茂みからひょっこりと顔を出してね。
 ロングコートの裾の砂汚れを手で払いながら中庭に出てくる。
 もう1人の見知らぬ男も続いて出てきた。

「誰? あなた」
「私ですか?え、えーと……」

 男は兄弟と同じく、宝石を飾られた服を着ていたから貴族――いや王族だろうとアリスはすぐに気が付いたよ。
 アリスが男に訝しげな視線を送ってるのに気付いたカールは、すかさず男に助け船をだした。

「この人はアルフレート王子だよ」
「アルフレート王子ですって? この国の王子様じゃない!」

 アリスがびっくりした理由は王子がこの庭に紛れ込んでいたことだけじゃない。
 ミュールミューレの国の王子といえば逞しい身体に男らしい顔つきの立派な男性だと聞いていたんだ。
 それがどうだろう。
 目の前で王子と名乗った青年はそんな噂とはまったく正反対の貧弱そうな青年なんだ!


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