薔薇とアリスと2人の王子


 アリスがアルフレート王子の顔をまじまじと見ると、彼は気弱そうに蚊のような声を漏らした。

「な、なんかスミマセン……勝手に…中庭に入って……」
「いいのよ、私の家じゃないから。それより王子様、『……』が多くない?」
「私、昔から気が弱くて……」

 この王子は下手したらまだ18歳のカールよりも貧相な身体をしている。
 目だって力無く揺れ動いているし、眉は常に八の字だ。
 確かに真面目そうではあるけどね。

「私もこの国の国民なのよ。隣町に住んでいたわ。王子様はすごく男前な王子って噂よ」
「それは表の顔です……。国政の場や社交場では堂々と振舞えるんですけれど、本当はこんなんで…」

 王子なだけあって、綺麗な金髪に、海色の瞳。顔は整っているが――。


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