薔薇とアリスと2人の王子
「裏と表の顔か。この家の娘のようだな。なぁ、アルフレート」

 ふいにイヴァンが口を挟んだ。
 すると弾かれたようにアルフレート王子が肩を震わして、恐ろしいことでもあったかの様にイヴァンに向かって叫ぶ。

「ちょ、ちょっとそれは言わないでって……!」
「この家の娘? ドリューのこと?」

 アリスがドリューの名前を出すと、王子は口をパクパクと魚の様に開閉させて、顔を真っ赤に染めちゃってさ。恥ずかしそうに体を縮めこませたよ。
 その様子に首をかしげるアリスに、カールが苦笑を漏らしつつ言う。

「まだ気付かないのかい、アリス? 彼がドリューと舞踏会で踊った王子だよ。ほら、今ガラスの靴を頼りにドリューを探してるっていう」
「え……、あっそうね! そういえば! どこかで聞いた名前だと思ったら」
 
 つまり、こうだよ。
 王子はドリューの居場所をとっくに知っていた。
 それで屋敷にやって来たはいいが、照れてなかなか会いに行けない。

 中庭で不審者よろしくウロウロしていたところをイヴァンとカールに発見されたってわけ。

< 39 / 239 >

この作品をシェア

pagetop