薔薇とアリスと2人の王子

 長い睫毛を数度瞬かせると、その大きな黒曜石の瞳で周囲を見渡すシャルロッテ。

「あれぇ? わたし…」
「良かった、起きたのねシャルロッテ!」
「あなた誰~?」

 その言葉に一同は凍り付いた。
 なんとシャルロッテは記憶を失っていたんだ。

 恐る恐るハンスEが声をかける。

「私達の事を忘れてしまったのかい、シャルロッテ…」

 するとシャルロッテが驚いて肩を揺らし、眉をひそめた。

「きゃっ、何この小さなおじさん? わたしはペンドラの国の王女だよ~? 気安く話しかけないでよぉ~!」

 少女は自分の身の上だけは覚えていたんだ。
 でも母親から逃げてきた事は忘れてしまったらしい。

 何と声を掛けていいか分からず困惑しているアリス達をよそに、シャルロッテは元気よく起き上がった。

「なんでわたしこんな森に? 早くお城に帰らなくちゃあ~」
「やめとけ。城に戻るとまた殺されるぞ」

 そうイヴァンが告げてやる。
 彼のほうを振り向いたシャルロッテがとつぜん顔を染めたんで、アリス達はそりゃもう驚いたよ!


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