薔薇とアリスと2人の王子


 少女は白い頬を淡い色に染めて、イヴァンの目の前に駆けて来た。

「なんて美しいお方~。この身なりと気品、あなたどこかの国の王子様?」
「お前を助けてやった王子だ。有りがたく思え」

 と、どこまでも高慢な態度のイヴァン。
 シャルロッテがにっこりと極上の笑みを浮かべる。

「目覚める瞬間、あなたのお顔が見えました~、これって運命の出逢いですね~!」

 これには女嫌いのイヴァンもすぐに感付いたよ。シャルロッテは自分に一目惚れしたんだってね。
 アリス達は何も言うことが出来ずオロオロとしたままだ。

 さらにシャルロッテは爆弾を投下した。

「決めました! わたし、あなたと結婚します~」
「――は?」
「今からわたしの城に戻りましょう。お母様に紹介しないとぉ~」

 ね? とイヴァンの腕に抱き付くシャルロッテ。
 イヴァンの背筋にゾワリと悪寒が走ったけど、さすがに少女の腕を振りほどくなんて乱暴なことはしなかった。

「カール! この娘をどうにかしろ」
「いっそ結婚したらどうです? 兄さんの代わりに僕が星の王子になるんで、星のことは心配無用です」

 弟はペロ、とお茶目に舌を出してみせた。
 その様子にアリスは口元を引き攣らせたよ。

「カールが王子になったら、ある意味いちばん厄介ね……」
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