薔薇とアリスと2人の王子

 そんなことを言っているうちに、シャルロッテはイヴァンの腕を引っ張って小屋を出て行っちゃったんだ。
 記憶が無いのに国へ帰る道は分かるのか心配になったけど、国のことは覚えていたからきっと大丈夫だろうね。

 残されたハンス達はシャルロッテが城に戻ってしまった事にに嘆きながら、部屋に引っ込んじゃった。
 相変わらずハンスAは姿を現さないよ。

 アリスとカールはというと――……。

「さ、城へ行こうアリス」
「あら。お兄さん見捨てるんじゃなかったの」

 きちんとイヴァンの荷物も持って、カールは小屋を出て歩き出す。

「まさか! ああ言ったけど、僕は王子になりたくないよ。自由に優雅に暮らしたいのさ」
「まあそうね。王様って大変そうだし」

 アリスはそう言いながら、結局姿を現さなかったハンスAが気になってね。

 だってハンスAがあまりにも可哀相でさ。
 愛する女性が記憶をなくして、行きずりの王子様と結婚しようとしているんだもの!
 ハンスはこのままこの事を知らないほうが幸せかも、なんてアリスは思ったんだ。



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