薔薇とアリスと2人の王子
ニヤリと笑ってお妃様は指示する。
「通してやりな。隙を見て私が直に殺しせばいい話よ」
「承知いたしました」
去っていく家来の背中を見送りながら、お妃様はドレスの懐に短剣を仕込む。
そしてシャルロッテをこの手で殺す計画を練り始めた。
そうだ、王子を交えて3人で婚礼の話をしたいとでも言って部屋に呼べばいい。
王子もろとも殺してしまおう。お妃様の考えはこうだったよ。
やがてシャルロッテが自分を呼ぶ声が聞こえて、お妃様は歪んだ笑みを消した。
同じころ、アリスとカールはバーナー城に辿り着いていた。
城の警備は手薄で、簡単に侵入できてね。すぐにイヴァンを探す。
「だいたい王室はどの城でも同じ場所にあるものさ。僕らの国でも王室は最上階の奥にある」
カールがそう言ったんで、2人は城の最上階にやって来た。
彼の予想は的中した。なるほど、王室らしく豪華な扉が姿を現す。
「この中に王子はいるのかしら」
「静かに、聞こえる。シャルロッテの声だ――」
2人は扉に耳をくっつけて会話を盗み聞きすることにした。
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王室の中では宝石が散りばめられた来賓用のテーブルに、お妃様とシャルロッテ、それにイヴァンが席を占めていた。
「お久しぶりです、お母様~。わたし気が付いたら森の中にいて……」
「散歩の途中で迷いこんだのでしょう。何事もなくて安心だわ」
お妃様はすっかり猫を被っていて、“優しい母親”を演じていたんだ。