薔薇とアリスと2人の王子
 弟の言葉にイヴァンは眉をひそめて黙った。(俺がやるのか、って感じでね)
 逃げろと言われたって、この状況じゃあ逃げられるわけがない。

 扉の外にいるカールとアリスに協力してもらおうとした時、

「きゃっ、お…お母様?」

 シャルロッテの弾んだ声が王室に響いた。
 見ると、お妃様が少女に向けて短剣を構えていたんだ!

「あ、危ないですよぉお母様!」
「記憶が無いとは言え、あんたも私の元に戻ってくるなんて馬鹿ねぇ! 毒林檎は失敗したけど、今ここで殺せば同じ事だわ」

 怯えるシャルロッテに迫るお妃様。イヴァンが少女のもとに駆け寄る。けれど遅かった。
 お妃様の短剣は、暖炉の炎に目映く反射しながら少女に向かって降りおろされた――。

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