薔薇とアリスと2人の王子


 アリス達は動けなかった。
 ただただ、シャルロッテの言動を見守ることしか出来なかったんだ。

「ほらぁ。この靴も、真っ赤で綺麗でしょ~?」

 シャルロッテは暖炉の上にあった鉄の靴の置物を、暖炉で炙ってみせた。
 鉄の靴は暖炉の火であっという間に高温となり、真っ赤に染まる。

 真っ赤に焼けた鉄の靴を火かき棒で持つシャルロッテ。

「お母様、きっとお似合いになりますわ!」
「な、何よ。ちょっと……何する気!?」

 後ずさるお妃様に詰め寄るシャルロッテは相変わらず満面の笑顔でさ。
 次の瞬間、少女は小柄な身体からは想像つかないほどの強い力でお妃様を押し倒した!

 お妃様が床に倒れた隙を逃さず、鉄の靴をその足に押し付けた。
 ジュウ、と嫌な音がする。

「ぎゃああ! あ、熱いー!」
「シャルロッテ、やめて!」

 お妃様の悲鳴が響き渡ると同時に、アリスが悲痛な叫び声を上げる。
< 76 / 239 >

この作品をシェア

pagetop