薔薇とアリスと2人の王子

「危なかった、この国の兵隊に捕まったら大変だよ」

 アリス達を家に(無理やり)招き入れたのは、まだ幼い少年だった。きっとアリスの同じ年くらいだと思うよ。(シャルロッテの前例があるから、見かけでは判断出来ないけどね)
 逃げ切れたことに安堵しながら、アリス達は息を整えている。
 少年が甲斐甲斐しく3人に椅子に座るよう勧めてくれてね。

「ありがとう。あなたは?」
「ぼくはピーター。ピーター・バッハマン。」

 少年は栗色の髪で、アリスから見てもみすぼらしい恰好をしていた。
 
 よく周囲を見渡せば家の中もずいぶんと荒れていてさ。
 貧乏なアリスの家にだって絨毯が引いてあったり花瓶に花が差してあったりしたけど、この家はそれすらもない。アリスの家よりも貧相だった。

 でもピーターと名乗る少年はとびきり明るい笑顔でね。好印象な少年だった。

「私はアリス・リデルよ。この偉そうな赤毛がイヴァン。ずる賢そうな黒髪がカールよ」
「前の紹介より酷いね」

 ピーターは3人を見渡すと、まだ声変わりしていない、高めのボーイソプラノで喋ったよ。

「お兄さんたち、貴族なんでしょ? そんな人達が追われてたから何事かと思ってさ、助けたんだ」
「そうだったの、助かったわ」
「どうして兵から逃げてるの?」

 ピーターが何気なく尋ねる。

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